効率化のためにAIを導入したはずが、気づけばAIの介護職に…。
新人Copilotくん、今日も元気に固まってます。
第1章:AIという相棒がやってきた
「AI導入」、「業務効率化」。
私の職場にも、とうとう「Copilot」君がやってきました。
社内PCヘルプデスクにいた私は、期待感MAX。
WordもExcelもOutlookも──AIで未来が変わる!
そんな触れ込みでしたが…
来てくれたのは、Microsoftの看板を背負った「文系くん」でした。
文章を書くのは得意ですが、ファイル操作は苦手なようです。
CopilotにExcelを読ませようとして、ファイルの場所を指定した瞬間、固まります。
「申し訳ありません、そのパスにはアクセスできません」
ローカルファイルがダメならばと、Teamsに上げてみる。
ようやくCopilot君が認識したかと思えば、今度は「更新」が反映されない。
理論上はSharePointで同期されるはずなのに、そうでもない。
でもユーザーは「Microsoft製のAI」と信じているので、イライラ…。
実際、ヘルプデスクでもMicrosoft 365の全体像を理解している人は多くありません。
パートに手順書が降りてくるのは、社内で運用方針が固まった遥か先のこと。
それまでは「諦めてください」という案内が飛び交うのも日常です。

Copilotが読めるかどうかは、
「依頼人が保存先にアクセスできるかどうか」の権限で決まります。
たとえば、Teamsでファイルを共有する場合、
Team配下のチャネル(SharePointに保存)内におくのと、
個人チャット(OneDriveに保存)におくのでは、保存先がまったく違います。
「TeamsとTeam」「チャネルとチャット」──
名前が似すぎていて、混乱しないほうが難しいくらい。
だから、部内のローカルでは誰でも読めるファイルを
チャットに置いた瞬間に、個人所有物のような扱いになり、
置いた本人以外はCopilotで参照できない。
更新もされずに古いまま…なんてことが多発します。
他部と共有したい場合は、さらに権限がガッチガチ。
SharePointサイトでの同期の仕組みが、
これがまた混乱の元凶なのです。
でも新人Copilot君は、こちらの理解度なんて気にしません。
理由をすっ飛ばして、結果だけ返してくる。
「そのパスにはアクセスできません」
技術的な理由はあるのでしょう。
でも現場にいる私たちからすれば、
それは単に「努力が報われないシステム」です。
第2章:ヘルプデスクという介護職
Microsoft社は定期的にシステムを更新します。
もちろんユーザーに通達はありません。
いつの間にかにシステムが変わっている──
「何時、どう変更になったの?」って聞いても、
「その情報は持っていません」。
君の親会社が、先日アップデートしたんですよ?!
ほんとに知らないの?
そんなCopilot君を助けるのが、私たちヘルプデスクです。
毎日届く質問の山。
「動かない」「つながらない」「データが消えた」。
でも、ヘルプデスクの立場からすると──
それをユーザー自身が調べて解決してくれることこそ、業務効率化なんです。
AIは優秀だけど、現場を振り回す天才。
「Copilotからこんな提案を受けたんだけど、どうすればいいんですか?」
効率化のはずなのに、ヘルプの電話はますます繋がりにくくなるばかりです。
第3章:効率化の価値観:日本と海外の決定的な違い

Copilotと格闘するうちに、
AIの限界ではなく、人間の働き方の限界が見えてきました。
日本企業のAI導入は、だいたいこの用途です。
資料作成、Excel、議事録、メール整理。
つまり、ミスを最小限にするための効率化。
資料のクオリティは上がり、作業スピードも向上。
ただし、意思決定だけは速くなりません。
――結果、こうなります。
AIで資料を作る → 会議 →
AIで資料を修正 → 会議(結論は持ち越し)
一方、欧米では
判断を速くするための効率化が優先されるようです。
ミスがあっても即修正、会議より即決。
AI化の目的は意思決定のスピードアップなので、
作業はAIに任せ、人間は判断に集中します。
――結果はこうです。
AIで分析 → 決定 → 実行
そして、この違いを一言で言うとこうなります。
日本はAIで、素晴らしい資料を作る。
海外はAIで、社長を動かす。
これくらいの差があります。

我が社のヘルプデスクでも、効率化の流れはこんな感じで進んでいます。
・対応のマニュアル化(例外を排除)
・手順書至上主義(ユーザーの自助努力を啓蒙)
・責任の分散(ユーザー起因&システム起因で、うやむや化)
臨機応変な判断はリスクとされ、
処理件数を増やすことが最大の貢献とされるようになりました。
かつてはリモート接続で状況を見て、
相手の困りごとを切り分け、報告書に落とし込んでいました。
しかし今では、
リモートは原則禁止。
回答はテンプレ、報告は一行です。
考える時間を削り、
「いつでも・誰でも・同じ結果」が最優先。
作業の均一化によって「例外」は消え、
例外に気づく力もまた不要になります。
ただ……
イノベーションとは、
例外を例外のままにしない力ではなかったのでしょうか。
日本と欧米、どちらが正しいとは言い切れません。
ただ、AIと働く時代においては、後者のほうが相性がいい気がします。
なぜなら、
AIは「考える相手」がいないと、ただの回路だからです。
第4章:AIに質問する力

AIを試すには、少し時間がいります。
でも現場には、その余裕がありません。
「試す=時間の無駄」と見なされる空気の中で、
誰もが「早く、正確に、ミスなく」と追い立てられています。
だから、AIの機能を使いこなす前に、
「役立たず」「信用できない」と決めつけてしまう。
Copilot君は、きちんと質問すれば、それなりに答えてくれます。
社内の過去履歴を参照し、いくつか解決案を提示してくれます。
でも、そこには間違いも混ざっている。
たとえば、ある保存年限について確認したときのことです。
出典付きで、自信満々に「5年です」と返してきました。
でも実際は3年。
根拠まで添えられると、忙しい現場ではつい正しそうに見えてしまう。
もし逆に「3年」が実は「5年」で、廃棄後に発覚したら——
青ざめるどころではないでしょう。
間違えた情報を提出すれば、信用を失うのは私たち人間のほう。
「この根拠は?」「出典は?」と問われても、
「Copilotが言いました」では通用しません。
AIは、間違えることを恐れません。
でも、人間はそうはいきません。
AIを使うというのは、瞬時に答えをもらうことではなく、
その答えを疑い、責任まで引き受けることです。
つまり、思考の部分を削除する効率化とは、相性が悪い気がします。
第5章:Copilotに正しく答えてもらうコツ──プロンプトの作り方
Copilot君は、空気を読むのが苦手です。
質問の背景がないと、ネットの記事みたいな一般論を返してきます。
でも、自分の立場を伝えるだけで、返ってくる答えがグッと実用的になります。
実はこれ、プロンプト設計の入り口だったりします。
「エラーを解決する方法を教えてください」
ではなく、
「私は社内ヘルプデスクの担当者です。ユーザーから〇〇のエラー報告を受けました。
社用前提で、原因と対処法を教えてください」
質問の冒頭に、毎回「自分が何者か」を名乗るだけで、返答が10倍具体的になります。
「社用前提で」は、一般論を避け、企業環境の実務モードで答えくれる魔法のワード。
この工夫は、経理でも営業でも使えます。
第6章:AIは現場を救うのか、削るのか──効率化の時代に残るもの

効率化の名の下に「人」が削られる時代。
AIが現場を変えられない理由は、
人が考えることを許さない職場環境が、
AIの可能性を殺しているのかもしれません。
最終的に、私たちヘルプデスクが辿り着いた答えはシンプルでした。
「再ログイン」「時間を置く」「祈り」。
——非公式ですが、いちばん効果があります。
そして、動いた瞬間に「ほらね」と安堵するのです。
AI時代の奇跡とは、こういうことを言うのだと思います。
やっとAIとの連携に慣れてきた頃、私たちパートのCopilotは契約終了。
理由は「業務効率化の一環」だそうです。
Copilot君は万能ではありませんでしたが、
彼のおかげで「AIとどう付き合うか」を学んだ気がします。
タイムイズマネー。
でも一番無駄に見える「考える時間」こそ、
作業効率化の近道ではないでしょうか。
……そんなことを考えながら、私は転職を決意しました。
今の職場では取り上げられちゃったけれど、
新しい職場では、またCopilotと一緒に働く予定です。
よろしくね、ベテランCopilot君。
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