【Copilotシリーズ】新人Copilotくん、今日も祈ってます──PCヘルプデスクが見たAIトラブルの舞台裏

新入社員として入社したCopilotが「効率化って何ですか?」と戸惑う様子を描いたイラスト。 働く母雀

効率化のためにAIを導入したはずが、気づけばAIの介護職に…。
新人Copilotくん、今日も元気に固まってます。

第1章:AIという相棒

AIで業務効率化──
そんなキラキラした言葉とともに、うちの職場にも Copilot 活用の波がやってきました。

当時、社内PCヘルプデスクにいた私は、正直かなり期待していました。
AIで問い合わせ対応が楽になるかもしれない…。
手順書探しの手間が減るかもしれない…。
そんな淡い期待を抱いていたのですが、
私の前に現れたのは、Microsoftの看板を背負った「文系くん」でした。

文章生成は得意。
でも、ファイル操作になると急に沈黙…。
Excelを読ませようとすると固まり、Teamsに置いたファイルは見失い、
「そのパスにはアクセスできません」とだけ返してくる。

それもそのはず──
企業向けCopilotが活躍できるのは、クラウドの世界。
Microsoft 365の環境が、一律に整っている職場です。

SharePoint、OneDrive、Teams、Outlook などの
社内データがクラウド上にあり、ユーザーに適切な権限があり、Microsoft 365アプリ版を使っている。
その状態なら、Copilot はかなり便利な相棒になります。

でも、現場はそんなに美しくない。

たとえば、パートの私は
無料版Copilot 従来Office」の組み合わせ。
社員さんみたいに
有料版Microsoft 365 CopilotM365アプリ版
が使える訳じゃないので、AIがいても劇的な変化は感じません。

そもそも Copilot は、ユーザーに権限がないものは検索できない仕様です。
しかも無料版Copilot では、
SharePoint サイト内のデータにアクセスすることすらできません。

ですが──
Copilot君自体は、ユーザーの環境の違いなんて、
こちらから名乗らない限り、察してはくれません。

第2章:同じ会社なのに、同じ画面を見ていない

新人Copilotくんが大切なスキルを学んでいるところ。 相手に合わせて答えること、情報の鮮度を保つこと、 そして会社ごとの保存先と権限を理解することを身につける図

① M365ユーザーかどうか(アプリ版か従来Officeか)

AI以前に、職場には見えない環境差があります。

本社の正社員は、Microsoft 365アプリ版
現場職員、派遣、パート、子会社、ベンダーは従来版のOffice
こういう環境差は、わりと多くの会社で起きていると思います。

環境が違えば、
同じ仕事をしていても、押せるボタンも、見えるファイルも、頼れるシステムも違うのが現実。

たとえば、
SharePoint上の Excel をブラウザ版で共有編集すると、
アプリ版で開いたときに、レイアウト表示や印刷結果が変わることがあります。

こちらの画面では、きちんと整っている。
余白も確認したし、印刷範囲も見た。
それなのに社員さんのPCで開くと、余白がグダグダの別物になる。

そして相手は、キョトンとするんです。
「え、これで完成ですか?」
みたいな空気になります。

違う…。
違うんです。
こちらは雑に作ったわけじゃない。
でも、こちらには社員さんと同じ環境がありません。
だから「向こうではどう見えるのか」を、確認したくても確認できないんです。

環境差のせいで、丁寧にした仕事が雑に見える。
人間は自分の見る世界が正義です。
隣人の画面には別の世界が広がっていると、誰が想像できるでしょうか。

② 認証という巨大な壁 『Microsoft の猫ムーブ』

ある日のこと。
役員が「俺だけ Copilot が壊れたから今すぐ直せ」と言い出したことがあります。

  • キャッシュを全部消してもダメ
  • PCのプロファイルを作り直してもダメ
  • VDIを初期化してもダメ

役員の仕事を止めて、できる切り分けは全部やりましたが、解消せず──
それでも、翌日にはしれっと直っていました。

認証が Microsoft 側で詰まっている時は、本当に何をしても無駄なんです。
こういう時の Microsoft 365 は、本当に ”猫” そっくり

SharePoint なんて特にそう。
気まぐれでご機嫌斜めになり、
でも、ある日突然、何事もなかったように擦り寄ってくる感じです。

第3章:最後に残ったのは、サインアウトと祈り

人間の仲間たちと一緒に働く、元気いっぱいのCopilotくん。 調べる・まとめる・提案する、その基本スキルを全力で発揮します。

① ヘルプデスクという介護職

Microsoftは、定期的にシステムを更新します。

  • 気づいたら画面が変わっている
  • 昨日まであったメニューが存在しない

そんなことがしばしばです。
変更点や、元に戻したくて解決方法を Copilot に聞いても、
「その情報は持っていません」

いやいや、君の親会社が先日アップデートしたんだよ……
ほんとに知らないの?

と言いたいところですが、
企業内のCopilot は、外部のWeb検索が禁止されていることが多いんです。
ただ、これはシステム管理者の設定次第なので、
ある部署では閲覧できたり、立場や身分によってバラバラです。

SharePoint や Teams も同じ。
サイト管理者の設定で権限が変わるので、使う方からみればルールがあいまいです。
同じ仕事をしていても、
「え、なんで私だけ見えないの」
「同じ部署なのに、僕は編集できないんだけど」
みたいな混乱が量産されます。

そんな Copilot君 の知らぬ存ぜぬをフォローするのが、私たちヘルプデスクです。

最近は、こんな問い合わせも増えました。
「AIからこんな提案を受けたんだけど、どうすればいいんですか?」
「一般論では可能でも、ご自身の権限だとOUTですよ…」
と心の声でつぶやく日々…。

私たちが日ごろ私用で使うAIよりも、社用AIは情報源が古いこともしばしばです。
AIは優秀だけど、現場を振り回す天才……少なくても私にとっては。
AIで業務効率化って──なんでしたっけ?

② 効率化の迷走

Copilot君と格闘するうちに、
見えてきたのは AIの限界ではなく、人間の働き方の限界でした。

我が社のヘルプデスクでも、効率化の流れはこんなふうに進んでいます。

  • 対応のマニュアル化
  • 手順書至上主義(ユーザーの自助努力を啓蒙)
  • 責任の分散(ユーザー起因&システム起因で、うやむや化)

臨機応変な判断はリスクとされ、
処理件数を増やすことが最大の貢献とされるようになりました。

かつてはリモート接続で状況を見て、
相手の困りごとを切り分け、詳細を報告書に落とし込んでいました。
しかし今では、リモートは原則禁止。
回答はテンプレ、報告は一行です。

『マニュアルは、ヘルプデスクサイトにございます。』
……なお、そのマニュアルに、答えが載っているとは限りません。

ミスを減らすためには、均一化も必要なのでしょう。
でも、それでは例外に気づく力まで削られてしまいます。

最終的に、人間のヘルプデスクがたどり着いた答えは案外シンプルでした。

  • 正しくサインアウト
  • 時間を置く
  • 祈る

非公式ですが、これがいちばん効くことがあります。
そして動いた瞬間に「ほらね」と安堵する。
AI時代の奇跡とは、たぶんこういうことを言うのだと思います。

第4章:AIを使いこなすとは?

AIを導入したものの、仕事は減らず定時を過ぎても働き続ける様子を描いたイラスト。

「AIと壁打ちして、アイデアを出そう」
──最近よく耳にする言葉です。
AIを試すには、少し時間がいります。
でも現場には、その余裕がありません。

AIは間違えることを恐れませんが、人間はそうはいきません。

誰もが 「早く、正確に、ミスなく」 と追い立てられる日々。
そんな空気の中で、AIを使いこなせと言われても、なかなか難しいものがあります。

人が考えることを許さない、忙しい職場環境が、
AIの可能性を先に削ってしまうのかもしれません。

そんなことを考えながら、私は今の職場を離れることにしました。

新しい職場でも、またCopilotと一緒に働く予定です。
今度こそ、少しは頼れる相棒になっていてほしいな。

よろしくね、ベテランCopilot君。


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