「車の渋滞が怖い」
「急にやってくる激痛で、道すがら何度もトイレに駆け込む」
「重要な会議前は、お腹が痛くなったらどうしようかと不安でたまらない」
父雀は、子どもの頃から過敏性腸症候群(IBS)を抱え、長年この地獄と付き合ってきました。
病院にも通い、整腸剤も毎日欠かさず飲んできた――
それでも変わらなかったお腹が、ある腸活を半年間続けた後に大きく変わり、今では長期旅行にも平気で行けるようになりました。
外出先では1日5回もトイレに駆け込んでいたあの頃が嘘のように、その後25年間以上再発していません。
なぜ父雀のお腹は変わり、その腸活をやめた後も、なぜ元に戻らなかったのか?
獣医師である父雀が、腸の中を一つの生態系に見立てて、元々自分の中にいた菌を動かすことに成功したロジックを公開します。
IBSに振り回されなくなった父雀
父雀は、子どもの頃からずっとお腹が弱い雀でした。
- 食べるとすぐに腹が痛くなる
- ガスが溜まりやすい
- 朝は1時間トイレにこもって出し切らないと不安
- 外出すると、道すがら何度もトイレへ駆け込む
いわゆる「過敏性腸症候群(IBS)」です。
もちろん、何もしてこなかったわけではありません。
病院へも通い、ビオフェルミンは子どもの頃から常用。
それでも、体質そのものはほとんど変わりませんでした。
ところが、ある腸活を約6か月続けたあと、状況が一変します。
その後は長期旅行にも普通に行けるようになり、
現在も軟便体質ではあるものの、昔のようにトイレに振り回される生活ではなくなりました。
父雀いわく、
「俺は、これで治った……」
そこで今回は、
なぜ父雀には、この腸活がフィットしたのか。
父雀の経過と、現在わかっている腸内細菌の仕組みを照らし合わせながら、腸の中で何が起こったのかを、生物学的に考察してみたいと思います。
※当時の腸内フローラを測定していたわけではありませんので、ここから先は、父雀の実体験をもとにした仮説です。
同じIBSでも原因や腸内フローラは人それぞれ。
必ずしも万人に当てはまるわけではありませんので、一つの可能性としてお楽しみください。
父雀が選んだのは「菌を足す」腸活ではなかった
父雀が約6か月続けたのは、
明治の宅配専用「明治おなか活力ミルク」という瓶入りの乳飲料。
現在は販売終了しています。
この商品に使われていたのが、
Propionibacterium freudenreichii ET-3株による乳清発酵物(菌株図鑑で確認)。
「プロフェック(Profec)」と呼ばれていた素材です。
普通のプロバイオティクスと少し違い、ただ「善玉菌を増やす」という曖昧な話ではありません。
ET-3乳清発酵物の特徴は、腸内にもともと存在するビフィズス菌の増殖を促す点にあります。(Pubmed)。
実際に、ヒト試験では便中のビフィズス菌の増加が報告され(J-STAGE)、
動物実験ではマウスの大腸炎モデルで、菌叢(腸内フローラ)が変化し、大腸の組織損傷や炎症反応が抑制されたと書かれています(PubMed)。
つまり、ET-3の狙いは一時的に下痢や腹痛を抑えることではありません。
外から菌を補充するのではなく、もともと腸内にいるビフィズス菌を増やし、腸内環境そのものに働きかけるというアプローチです。
父雀が試したのは、自分が元々持っていたビフィズス菌を増やすという腸活でした。
なぜ、昔から飲んでいたビオフェルミンでは変わらなかったのか

ここが一番面白いところです。
父雀は、子どもの頃から「ビオフェルミン」を毎日のように飲んでいました。
でも、ほぼ変化なし。
ところが、
ET-3乳清発酵物を摂取
↓
約6か月で症状が大きく改善
↓
ET-3を卒業
↓
その後はビオフェルミン/ビオスリーで維持
という経過をたどっています。
同じビオフェルミンなのに、昔は効かず、今は維持に役立っているように見えます。
この差を解く鍵は、「よそから来た菌」と「地元の菌」の違いにありそうです。
「○億個配合」でも、よそ者菌は住民になれない
サプリや整腸剤には「○億個配合」と書かれています。
毎日飲めば、数で押し切れそうな気がします。
でも、腸の中はそんなに甘くありません。
- 胃酸や胆汁で、大腸にたどり着く前に脱落する菌も多い
- 地元の菌は、酸を出したり、エサを先に食べ尽くしたりして、よそ者を寄せつけない
- 大腸の粘液・免疫も、新参者にはそう優しくない
- 腸の中身は常に流れているので、居場所のない菌は増える前に押し流される

○億個配合って聞くとすごそうだろ?
でも腸の中には、数十兆の地元民がいる。
満席の店に毎日団体客が来ても、座れずに帰るだけだ。
定着できるのは、たまたま空席があった時くらいだな。
外から入れた菌の多くは、腸に住み着かずに通過していく「旅行者」。
飲んでいる間は腸の中にいても、やめれば数日〜数週間でいなくなることが多いのです。
旧政権は、子どもの頃からの「長期政権」だった
腸内フローラの土台は、幼少期から形成されていきます。
父雀の不調は、小さい頃から。
つまり、父雀の腸内には何十年も続いた「長期政権」があったと考えます。
父雀を苦しめていたのは、特定の「悪玉菌」ではなく、
父雀にとって都合の悪い菌の組み合わせと、その腸内バランス。
それも外から突然やってきたものではなく、
もともと父雀の腸内に長く根付いていた菌群です。
少数派なら悪さをしないのに、勢力が強くなりすぎると、ガスや腹痛の原因になってしまう。
そんな「バランス次第で困った存在になる住民」たちです。
長年続いた政権は、それだけ根が深い。
だから、毎日やって来る旅行者菌(ビオフェルミン)では、びくともしなかったのでしょう。
政権交代を起こしたのは、地元の住民だった
ところがET-3は、旅行者を送り込むのではなく、
父雀の腸にもともといた、自前のビフィズス菌を増やしました。
自前の菌は、父雀の腸の環境にすでに適応済みの「地元の住民」。
住民数が増えれば、町の勢力図そのものが変わります。
ET-3
↓
自前のビフィズス菌が増える
↓
乳酸・酢酸などの代謝物が変化し、腸内が酸性寄りに
↓
酪酸を作る菌など、周囲の菌もクロスフィーディングで連動
↓
腸内フローラ全体が、別の状態へ移行
ビフィズス菌は単独で暮らしているわけではありません。
糖を発酵して乳酸や酢酸などを作り、それを別の腸内細菌が利用します。
ビフィズス菌が作った代謝物を利用して、
Faecalibacterium、Anaerostipes、Roseburiaなどの酪酸産生菌が活動する「クロスフィーディング」も知られています。
つまり菌同士が、
- 食べ物を奪い合う
- 代謝物を受け渡す
- 増えた菌が周囲の環境を変える
そんな関係を作りながら、ある程度安定した生態系を維持しています。
父雀の転機になったのは、
父雀自身が持っていたビフィズス菌を、一定数以上まで増やしたこと
だったのかもしれません。
自前のビフィズス菌が勢力を盛り返し、酪酸菌たちとも手を組んで、「連立政権」を作った。
旧政権の「都合の悪い」菌たちは、消えたわけではなく、勢力を失って少数派に転落。
その結果、激痛やガス、トイレへの駆け込みは落ち着いた。
そんな仮説が成り立ちます。
一方で、便がゆるい体質は今も残っています。
これは菌の勢力図とは別の、腸の動きの速さなど、もともとの体質による部分なのかもしれません。
旅行者菌が「パトロール隊」になっている
なぜ、体質改善後は「ビオフェルミン」や「ビオスリー」が効くように感じたのか。
旅行者菌はなかなか住民にはなれませんが、通過している間もちゃんと活動しています。
エサを少し横取りしたり、酸を出して腸内を酸性寄りに保ったり。
一つ一つは小さな力でも、毎日流れてくることで、
少数派に転落した旧政権の「都合の悪い菌」が勢力を盛り返す隙を、少しづつ削っている可能性があります。
一度新しい政権に移った腸内フローラは、今度はその状態を守る方向に働くのです。
父雀のおなかの中では、「変える腸活」から「維持する腸活」への切り替えが起きていたのかもしれません。
新政権は、もう自力で立っている
……と、もっともらしく書いてきましたが、
実は今の父雀、ビオフェルミンを毎日は飲んでいません。
最近、ちょっとサボりぎみで、飲むのは調子が悪い時だけ。
それでも、昔のお腹には戻っていない。
つまり新政権は、もう毎日の応援がなくても、自力で立っている可能性が高い。
ビオフェルミンとビオスリーは、ピンチの時に駆けつける援軍。
今の父雀にとっては、そんな存在です。
大腸検査をしても、抗生物質を飲んでも、昔のお腹には戻らなかった
この仮説を面白くする出来事がもう一つあります。
父雀はその後、大腸検査を複数回受けています。
風邪で抗生物質を処方されたこともあります。
特に大腸検査では、前処置として大量の下剤を飲み、腸の中をかなり徹底的に洗います。
当然、腸内フローラにも一時的な変化が起こります。
もしET-3を飲んで、一時的にビフィズス菌が増えていただけなら、
ET-3の摂取をやめたり、抗生物質を飲んだり、腸内を大きく洗浄したりした後に、昔の状態へ戻っても不思議ではありません。
それでも父雀は、
昔の「何を食べてもトイレ一直線」の状態には戻りませんでした。
だとすれば――
父雀のおなかの中では単にある種類の菌が増えただけではなく、腸内細菌同士の関係そのものが組み替わったと考えるのが自然。
腸内洗浄後に「元に戻ろうとした時の行き先」まで変わっていた可能性があります。
いわば、半年かけて起きた、腸内フローラの「政権交代」です。
販売終了した「おなか活力」の仕組みは、今も残っていた
残念ながら、父雀が使った
「明治おなか活力ミルク」は現在販売されていません。
姉妹品の「おなか活力タブレット」も販売終了になっています。
かつてこの商品は、プロピオン酸菌による乳清発酵物によって、
「おなかの中のビフィズス菌を増やす」トクホとして販売されていました。
ただし、この仕組みそのものが消えたわけではありません。
現在、明治から
「朝のリズム チーズ」という商品が販売されています。
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パッケージには「プロピオン酸菌による乳清発酵物」と書かれていてET-3の名前は出てきませんが、中身は同じ仕組みです。
このプロフェックの中に含まれるDHNAが、自分のお腹にいるビフィズス菌を動かす立役者になっています。
パッケージにも、機能性表示食品として
『DHNAは、ビフィズス菌を増やして腸内環境を整え、お通じを良好に保つ働きが報告されています』
としっかり記載されています。
父雀が使った商品そのものではありませんが、
「外から菌を足すのではなく、自分の腸内にいる菌を増やす」
という発想は、今でも引き継がれています。
※注意 : 乳製品が体質に合わない方へ
プロセスチーズなので牛乳ほど乳糖は多くありませんが、乳アレルギーの方や、乳製品そのものでお腹を下しやすいタイプのIBSの方は無理をしないでくださいね。
なお、DHNA以外にも、自前のビフィズス菌を増やすルートはあります。
例えば「ガラクオリゴ糖」もその一つ(PubMed)。
試験では、ビフィズス菌の増加に加えて、ガスや膨満感などが改善したのは、1日3.5gの少なめの量でした。
ただし、ガラクトオリゴ糖にも、自分の腸内フローラとの相性があります。
同じガラクトオリゴ糖を摂っても、
もともと持っているビフィズス菌の種類や菌株によって、増える菌も反応の強さも変わります。
いわば、「オリゴ糖ガチャ」が成り立ちます。
まとめ
父雀の転機は、ET-3乳清発酵物でした。
そのたった一つの選択で、
「外出したら、まずトイレを探す生活」から、
「長期旅行にも普通に行ける生活」へ変わりました。
誤解してほしくないのは、
ET-3がIBSに効くという話ではない、ということです。
人によって、もともと持っている腸内細菌も、その勢力関係も違います。
ただ、「有用な菌を○億個配合」など、
腸内細菌は、投入した菌の数だけで決まるほど単純な世界ではありません。
でも、25年間ほとんど変わらなかったお腹が、その後ET-3を飲まなくても安定し続けている。
父雀の経過を見る限り、
「腸内フローラを一度、大きく動かす」という考え方は、試してみる価値があると思っています。
毎日、
「途中でトイレに行きたくなったらどうしよう」と考えながら生活している人にとっては、
腸内環境が少し安定するだけでも、行ける場所と、できることが大きく変わります。
あなたの通勤や外出の不安が、少しでも軽くなりますように。

