俺のまわりの不思議な話|誰もいない駅で、世界が一瞬止まった話(Vol.2)

F1と野球と時々、カオス

あの日のこと

あの日、世界がほんの一瞬だけ止まった。
人々が消え去った、その静けさを覚えているのは、母雀と俺だけだ。

駅で起きた出来事

子どもの頃、電車が好きだった。
とくに新幹線。
あのフォルムと、風を切る音がたまらなかった。

その日も、新幹線を見に行った。

小一時間ほどホームで粘って、そろそろ帰ろうかって時。
連絡通路を進んでいくと、帰りの在来線のホームが見えた。

アナウンスが流れて、もうすぐ電車が入ってくるのが分かる。
ホームには人がいっぱいで、端っこには脚立を立てて電車を狙う鉄ちゃんまでいた。
なんか、いい光景だった。

――その時。
背後から、新幹線の通過音が聞こえた。

お目当ての車両を見られなかった俺は、
つい反射的に振り返った。

母雀も一緒に後ろを見た。
でも、「早く行くよ」と声をかけられて、すぐ在来線の方へ向きを戻した。

おかしい、と感じた瞬間

……あれ?

目の前に、誰もいなかった。

電車を待ってた人も、
さっきまで立ってた鉄ちゃんも、
降りてきたはずの乗客も――全員、いなかった。

音も、消えてた。
ホームは静まり返っていて、風の音すら感じなかった。

俺と母雀は顔を見合わせた。
お互い――何も言えなかった。

一本道の通路だ。
多少時間が経っていたとしても、
降りてきた人たちは必ず横を通るはず。
なのに、誰もいない。

……だれも。

今でも説明できないこと

うちのリビングでおこる怪奇現象とは違う。
あれは“気配”だったけど、
これは“世界が一瞬ズレた”感じ。

母雀が、小さく息をのんでつぶやいた。
「……もしかして、ワープした?」

「うん…」
思わず、素で返した。

正直、自分の頭がおかしくなったかと思ったんだ。
俺だけ異常なのかって焦ったけど、
母雀もキョトンとしてたから、
――あ、自分だけじゃない。
そう思って、少しだけホッとした。

母雀と走ってホームを見に行った。
でも、遠くにも電車の影はなかった。
たった今出て行ったのなら、まだ見えるはずなのに。

でも、あの瞬間だけは本当に――
時間が飛んだ気がした。

「噓でしょ…」
冗談のつもりで笑ったけど、
その笑いがやけに響いた。

だって、俺たち以外、
誰もいなかったから。

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